特集 看護学生のこころの問題を探る
看護学生にセクシュアリティ教育を―女性としての多価的生き方の実現のために
髙村 寿子
1
1自治医科大学看護短期大学
pp.468-473
発行日 1991年8月25日
Published Date 1991/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663900240
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はじめに
青年期の発達課題は,自分固有の生き方・考え方を求めて,自己アイデンティティを確立していくことに他ならない.とくに看護職という専門職をめざす看護学生の多くは,将来に向けて多様な生き方の広がりと深さを求め,多価的な生き方を願望している.つまり,看護職を結婚するまでの腰かけでなく一生の仕事と考えつつ,結婚,妊娠,出産そして母親という女性固有な機能を果たす生き方のイメージをもち,そうした生き方を選択しようとしている.
こうした看護学生の願いは,それが真摯であるがゆえに,深い心理的葛藤を生みやすい.なぜなら,看護学生の学生生活は,比較的時間的な余裕のある一般大学生のそれに比べ,ともすると看護教育特有のカリキュラムの過密さや,心身ともに高い緊張状態にさらされる臨床実習の影響とが重なり,看護職になろうという所期の目標への疑問やそれに伴う価値と行動の乖離,自己の喪失,学生生活に対する不適応や進路変更という挫折に直面することが少なくないからである.時にはアイデンティティの拡散に陥り,いわば宙をさまよっているような状態となる場合もある1).
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