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書評 ネウボラから学ぶ児童虐待防止メソッド
堀内 都喜子
pp.497
発行日 2023年8月25日
Published Date 2023/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663202130
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ネウボラを知らない人も知識がある人も学びを得られる一冊
ネウボラはフィンランド語で「アドバイスの場」を意味し、フィンランドのどの自治体にもある無料のプライマリケアシステムの一つである。家庭環境や経済的背景を問わず、ほぼ国民全員が利用する制度(場所)として、約100年前から赤ちゃんと母親、さらには家族全体の健康とウェルビーイングを支えてきた。そんなネウボラがこの10年ほど日本でも注目されるようになり、ここから妊婦・子育て家庭への伴走型支援実現のヒントを得ようとしている自治体は多い。しかし、本当の意味でフィンランドのネウボラを理解している人はまだそれほど多くはない。また、大事な要素を活かしきれないまま形だけの導入もみられる。
本書は、ネウボラをまったく知らない人から知識がある人まで、皆が学びを得られる一冊となっている。第1章ではネウボラの基礎をわかりやすく解説。第2章では主に児童虐待に対してどのような予防的支援を行っているかが、具体的な問いかけやアンケートの事例を交えながら紹介されている。何かが起きてからでは遅く、起きる前にリスクや課題を早期発見して予防していくという「予防的支援」は、フィンランドの社会保障には欠かせないアプローチである。したがって、子どもへの虐待だけでなく、パートナーとの関係や教育など幅広い分野の記事がこの章には含まれる。
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