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はじめに
近年、さまざまな産業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、なかでもXR(クロスリアリティ)技術の進歩は目覚ましく、医学教育ではVR(仮想現実:Virtual Reality)技術を活用した外科臨床実習1)などが実施されている。そして、JPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)では、コロナ禍の代替手段としてVRをコンテンツを用いた研修が行われ、その効果が報告されている2)。このようななか、筆者は2016年度よりVR教材の作成に着手し、看護基礎教育において、成長発達過程にある子どもイメージの促進や危険予知能力の向上など、思考の育成を目的とした教材づくりを中心に実装を重ねてきた。さらに、最近では、Oculus Quest 2®のようなハンドトラッキング機能を搭載するツールが登場し、HMD(Head Mounted Display)で見るVR空間に視聴者の手の動作を追跡・再現して表示することが可能となった。大石ら3)は、今後もハンドトラッキングで操作するアプリケーションが増加すると予想しており、医療分野では実写の治療VR内に映る術者の手技に視聴者の手を重ねて実践演習を行う手法などが開発されている。
そこで、筆者らは、この技術は精密な手作業を必要とする看護技術にも親和性があると考え、ハンドトラッキングを含めたVR教材を用いた看護技術演習を計画した。小児を対象とした技術演習では、対象の特性からモデル人形を使った演習が中心となりやすく、リアリティを感じにくいという課題がある。また、臨地実習において看護学生が小児に直接与薬をすることはなく、近年はコロナ禍のため対象者への配慮から近距離で見学することさえほとんどできない。そういった課題から、実写版VR教材でリアリティを追求しつつ、ハンドトラッキングを用いて看護師目線で小児の経口与薬を疑似体験する演習を実施したので、本稿でその内容を報告する。
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