連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・12【最終回】
民族問題と幼い母―『火の山のマリア』
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科
pp.1058-1059
発行日 2019年12月25日
Published Date 2019/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201392
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作品紹介
最終回は『火の山のマリア』(ハイロ・ブスタマンテ監督、2015年、グアテマラ・仏)を紹介します。本作の舞台は、かつて古代マヤ文明が繁栄したグアテマラの高地です。自然に満ちたその場所で、先住民族のマヤ人はマヤの言葉を話し、呪詛や精霊を信じながら暮らしています。マヤ人のマリアは17歳で、両親とともに火山の麓のやせた土地を耕して細々と生計を立てていました。一家は地主のイグナシオから土地を借りており、マリアはイグナシオが経営するコーヒー農園でも働いています。しかし、一家の生活は貧しく、いつ借地から追い出されるかわかりません。
イグナシオは妻を亡くしており、両親はマリアを後妻として嫁がせようとしますが、マリアは農園で働く青年ペペに好意をいだいていました。ある晩、マリアはペペのもとを訪れ、2人は一夜をともにします。アメリカに憧れていたペペは、いずれマリアと一緒に密入国する約束をしました。しかし、ペペはマリアを妊娠させたあげく、彼女を見捨ててひとりで村を出てしまいます。母親は妊娠を地主に知られないうちにマリアを流産させようとしますが、うまくいきません。最終的に母娘は、赤ちゃんを産むことを決意します。
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