連載 臨床倫理を映画で学ぼう!・10
人口問題と個人の権利―『セブン・シスターズ』
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科
pp.884-885
発行日 2019年10月25日
Published Date 2019/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201349
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作品紹介
今回は『セブン・シスターズ』(トミー・ウィルコラ監督、2017年、英・米・仏・ベルギー)を取り上げます。舞台は2070年代の欧州連合。世界は人口爆発と温暖化による環境破壊のため、深刻な食糧危機を迎えていました。1日あたり25万人の児が生まれ、間もなく世界人口が100億人に達しようとしています。連合は最新の科学技術を用いて、新たな遺伝子組み換え食糧を開発し、いったんは食糧危機を乗りきりました。しかし、その食糧の摂取は、多胎妊娠を引き起こすという思わぬ結果をまねいたのです。妊婦が軒並み双子や三つ子を出産するようになったので、世界の人口増加に拍車をかけることになってしまいました。
連合はこの危機的状況に立ち向かうべく、生物学者のケイマン博士の指揮の下で児童分配法を成立させ、同法を強制執行するために児童分配局を設立しました。社会はいわゆる一人っ子政策を導入し、第二子以降をもつことは違法とされたのです。そして「闇で生まれた子」が摘発された場合は、食糧難が解消するまで冷凍状態で眠り続ける処置(クライオスリープ)を受けることになったのでした。
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