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家族のダイバーシティを考える3つの視点
私の研究哲学であるダイバーシティ(多様性)は,「性差(ジェンダー)」から始まっており,それぞれの違いを認め合う個の尊重と考えている。ここ十年ほどで,ダイバーシティという用語は多く聞かれるようになり,それによって,幅広く性質が異なるものが存在し,その違いを生かすことがイノベーションにつながる,と考えられるようになってきた。そして,多様な人材の登用が,組織のパフォーマンスを上げることにつながるという考え方も広がっている。この「多様」が意味するものは,年齢,性別,国籍,人種,障害の有無,性的マイノリティ(LGBT:レズビアン,ゲイ,バイセクシュアル,トランスジェンダー)などである。さらに雇用形態,婚姻状況,嗜好,収入,出身地,価値観などの違いも,ダイバーシティとしてあげられるだろう。
それでは,本稿で扱う「家族のダイバーシティ」をどうとらえたらいいのだろうか。看護学の各専門領域の概論を教授しようとするとき,たとえば高齢者看護では,高齢者の単身世帯の増加から派生する問題を考える。また小児看護では,ひとり親世帯の増加に伴う子どもの貧困やその子どもたちの健全な成長発達を考えるように家族形態の変化に注目する。また,古典的性別役割分業と戦後の日本の経済成長が合体してできた家族規範から1999年男女共同参画社会基本法の制定によるジェンダー規範の変革が古典的性別役割分業の見直しとバブル経済崩壊後の平成不況とが,家族とはこうあるべきを崩していったと考える。さらにこの家族形態と家族規範の在り方の変化が,自分が家族とみなす範囲のとらえ方(ファミリー・アイデンティティ)を変えてきたともいえる。
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