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はじめに
セクシュアリティについてアメリカの性教育学者であるカルデローン(Calderone, Mary. S. )とカーケンダール(Kerkendall, Lester A)は,「セックスは脚の間にあるが,セクシュアリティは耳の間にある」と述べており,鹿間のカーケンダールの性の概念のまとめにおいては,「セクシュアリティの本質は,幅広い人間関係や行動様式の中に存在し,セクシュアリティは生涯を通じて存在する」と報告している1)。故にセクシュアリティは,性を軸にした心理や社会的側面を包括し,その人の生き方や人生を意味する概念である。
患者のセクシュアリティにかかわる看護ケアとしては,排泄ケアや産後の悪露の観察と創傷部の観察など性器に直接かかわるものや,対象者へのマッサージなどがある。このような“対象者に触れる”ことが,状況によっては患者やその家族のセクシュアリティに影響する可能性がある。たとえば,「母親の排泄ケアを男性看護師がしていると,その母親が泣いて嫌がり,子どもに訴えた」「中高年で乳房のエコーを受けたとき,男性医師に担当されて恥ずかしかった」「息子の排泄ケアを若い女性の看護師がしていたのを,息子がかわいそうにと今でも思い出す」などの言葉を聞いたことがある。患者や家族の訴えの内容は,実は性別の問題でなく,医療者のかかわり方ではなかっただろうかとも考えられるが,今の医療の現状として,患者は看護師を選ぶことはできない。男性,女性の枠組みだけでなく,この看護師にケアをお願いしたいということは不可能である。性別にかかわらず,すべての医療者がセクシュアリティを意識したケアをする必要があり,それを意識しかかわることで,患者やその家族のセクシュアリティへの影響を最小限にすることは可能であろう。それを学生の間から学ぶ必要がある。
今回看護学生のなかではマイノリティである男子学生にも焦点を当て,学生が看護のなかでセクシュアリティをどのように学ぶか,身体接触をどのように学ぶか,そのなかでの教員の役割は何かを考えたい。
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