連載 アジア,アフリカ,ラテンアメリカの看護教育はいま・11
バングラデシュ─最貧国からの脱却,看護も次のステージへ
五味 麻美
1
1川崎市立看護短期大学
pp.146-151
発行日 2016年2月25日
Published Date 2016/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200446
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バングラデシュ人民共和国(以下,バングラデシュ)と聞いて,皆さんはどんなことを思い浮かべますか?日本にいると貧困や自然災害などネガティブなイメージが先行しがちですが,バングラデシュは訪問前に抱いていたイメージと実際に訪れて感じた印象とのギャップが大きい国の1つと言われています。
ヒマラヤ山脈を水源とするガンジス(ポッダ),ブラマプトラ(ジョムナ),メグナの3つの大河が流れ込む地形ゆえに雨季には洪水によって国土の3〜4割が浸水し,毎年のようにサイクロンなどの自然災害に見舞われます。一方で,大河によって形成された肥沃な土壌は「黄金のベンガル」と謳われるほどの豊かな実りをもたらします。社会経済指標では長年,最貧国に分類されてきましたが,人口の6割以上が農業に携わり,米の消費量は世界一(日本は50位),養殖や淡水漁業の漁獲量は世界第4位1)であることはあまり知られていません。また,一年中暑いと思われがちですが,春,夏,雨季,秋,霜季,冬の6つの季節があります。菜の花(からし菜)が大地を覆いつくし,黄色い花畑がどこまでも続く春,青い空,色鮮やかな民族衣装,町の雑踏,灼熱の太陽と木々の緑,すべてが色濃く映えエネルギーに満ちあふれる夏,満天の星空を蛍が飛び交う秋の夜,静寂のなかで深い霧が立ち込める幻想的な冬の朝。自然がもたらす災いと恵み,喧騒と静寂,富と貧困……。今回は,さまざまなコントラストが凝縮された水と緑の国バングラデシュについてお伝えします。
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