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はじめに
近年,Facebook,Twitter,LINEなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の発達が目覚ましく,SNSを用いることで誰もが個人的な考えや出来事を社会に発信する機会を持つことが容易になった。SNSへの“軽い気持ち”の書き込みが社会的に大きな波紋を生み,人権侵害や個人情報保護法への抵触など,書き込みを行った本人のみならず関係者にも社会的な影響を及ぼしかねない状況である1)。多くの大学では,学生を対象としてインターネット・電子メール・SNSなどにおける情報リテラシーと個人情報保護意識の向上のためにガイドラインの提供を行っている2, 3)。さらに,看護学生(以下,学生)には従来から厳密に個人情報保護,情報倫理および医療倫理などの倫理教育がなされている。医療と情報システムや看護と情報に関する倫理などでは,倫理教育に関係する情報リテラシーの充実が求められている4)。
私は,近畿大学附属看護専門学校において2010年度以降「情報統計学」を担当している。2010・2011年度の学習目標は,「PCの操作知識を習得」と「統計学の基礎を学ぶ」とし,講義・演習を実施した。その講義期間中の学生の様子から,学生は,入学前から利用しているSNSと入学時に学んだ医療倫理・情報倫理の知識は,密に関連するという自覚が不十分なままではないのか。学生が深く考えることなくSNSに掲載した内容が大きなトラブルとなるのではないかとの危惧をもった。
情報リテラシーについての講義を増やすべく,2012年度から教科書を看護情報学(医学書院)5)に変更し,学習目標を「PC操作の習得」「統計学の基礎を学ぶ」「情報リテラシーの向上」とした。2012年度以降の講義・演習は,2010・2011年度に実施した14回の内容を全て網羅するように配慮して講義・演習を圧縮し,「情報リテラシーの向上」のために5コマ(講義1コマと演習4コマ)を新たに設けた(表1)。近年,中学校・高等学校における情報教育の充実が図られ6, 7),学生は,PCとソフトウエアの操作およびインターネットによる情報検索を本校入学以前に学習を終えているため,演習時間の圧縮は,学生の学習に不都合はないと考えた。
本報告は,「情報リテラシーの向上」を学習目標に加えた「情報統計学」の講義・演習の実践について報告する。さらに授業の効果を調査するために受講前後の学生を対象にしたアンケート調査を行なった結果,興味深い結果が得られたので,併せて報告する。
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