増大号第2特集 看護学生・教員エッセイ─入選エッセイの発表
教員部門
卒業生の輝き
宮本 円
1
1専門学校麻生看護大学校
pp.762-763
発行日 2015年8月25日
Published Date 2015/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200295
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何となく落ちつかない夜は,素敵な出会いの前兆だった。夫がお盆で実家に帰省していたこともあり,静かな部屋に鳴りやまない雷が響いていたことを鮮明に覚えている。かわいい逆子ちゃんの胎動は活発で,「よしよし元気だね」と話しかけながら早めに就寝することにした。深夜0時過ぎ,パンと弾ける感覚とともに一気に布団が濡れる感覚を覚えた。「破水だ。私,今日,お母さんになるんだ」。一瞬にして事態を把握した私は,さまざま準備を整えてタクシーで病院へ向かった。これから始まる出産への期待で高揚したが,妙に冷静だった。3時間後,私はお母さんになった。34週と6日,骨盤位だったわが子は,帝王切開で生まれ,元気いっぱいに泣いてくれた。1794gと小さくNICUへ入院となったが母子ともに健康で無事出産を終えた。
私が出産した病院には,たくさんの教え子たちが働いている。手術に立ち会ってくれた看護師3人は全員教え子,NICUで赤ちゃんを担当してくれた看護師も教え子,手術後に迎えに来てくれた助産師も教え子。出産という貴重な経験の最中にも,「よしよし優しい声掛けだぞ」「羞恥心への配慮もできているな」「おっとベッドの向きが逆じゃないかな」など教員としてのチェックを入れる自分に,「おいおい」と突っ込みを入れたくなった。皆,素晴らしナースに成長している。顔見知りの患者は緊張するものであるが,相手が先生ともなるとさらに緊張していたに違いない。しかし,そっと添えられる手や不安にさせない声掛け,スムーズな持続的導尿のカテーテル挿入,手術の介助など学生時代には考えられないくらい成長していてうれしい。このときはまだ,そんなことを考える余裕があった。
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