特集 本当に伸ばすためのコミュニケーション教育
身体アウェアネスを育てる─身体関係論から見えてくること
山地 弘起
1
1長崎大学大学教育イノベーションセンター
pp.318-323
発行日 2015年4月25日
Published Date 2015/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200190
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コミュニケーション力が求められるさまざまな要請
コミュニケーション力というのは,社会的生き物であるヒトにとってサバイバルに直結するものである。したがって,母親の子宮のなかにいる時から発達し始め,学生としてわれわれの前に現れる頃には,発達過程でのさまざまな課題に対処してきた帰結としての,その人なりの「効果的な」コミュニケーション・スタイルをすでにもち合わせている。日本で生まれ育ったのであれば,たとえ環境の違いや生得的な傾向の幅があったとしても,いわゆる日本的な対人関係の文化に自然に馴染み込んでいるであろう。
日本的なるものの実態ははっきりしないが,たとえば外国で日本人的な身使いや振る舞い,コミュニケーションの癖などに気づくことは多い。コミュニケーションは全身的なものであり,発話の際には呼吸や発声の仕方が直接かかわっているし,相手を理解する際には表情やジェスチャーなど,言葉の内容以外から多くを感じ取っている。われわれは特定のコミュニケーション文化のなかに丸ごと生まれ込んでくるのであり,日常的なやりとりを通してそれを自らの身に取り込み,かつ状況に応じて工夫しながらコミュニケーション力を高めていく。
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