特集 卒直前の事故防止演習
卒直前に知っておくべき危険な薬剤—エラー事例から学ぶ
古川 裕之
1
1金沢大学医学部附属病院臨床試験管理センター(医療安全管理部兼任)
pp.181-189
発行日 2004年3月25日
Published Date 2004/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663200171
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
専門職として,患者さんから信頼されるナースになりたい.そんな希望に胸をふくらませて臨床現場にデビュー.しかし,それを一瞬のうちに砕いてしまうものが潜んでいる.
2000年以降,医療機関で発生する事故が社会の関心を集めている.やっと一人立ちして,さて今からというときに,たまたまエラーを犯し,不幸にして患者さんに大きな健康被害を与えてしまったケースも報道されている.マスメディアの医療事故に関する報道に,「看護師」というキーワードが含まれることは少なくない.
他施設で発生したエラー,また,自分以外の者が起こしたエラーから学ぶことは非常に大切である.なぜなら,いつ自分が同じエラーを起こすかもしれないからである.また,マスメディアの報道では,同じ薬剤での事故が何度も取り上げられている.多くの医療機関で「エラー報告制度」が導入されており,エラーを隠すことなく,報告することを求めている.罰則を目的とした強制的な報告制度とは異なり,自発的な報告制度は,エラー要囚を分析し,再発を防ぐための施設の状況に応じた対策に取り組むことが目的である.
本稿は,薬剤投与時のエラーを避けるために,「どんなことに特に注意する必要があるのか?」について知り,「なぜダメなのか?」について理解を深めることを目標に置いている.「人は誰でもエラーを起こす」ということを再確認し,大きな健康被害に繋がるエラーを防止するために,薬剤が関連した実際のエラー事例(主要全国紙の掲載記事)を参考に,エラー要因を理解し,エラー防止のためのポイントを学んでほしい.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.