連載 実習の経験知 育ちの支援で師は育つ・18
成果を支え,評価を支える
新納 美美
1
1北海道大学大学院理学院自然史科学専攻
pp.147-151
発行日 2013年2月25日
Published Date 2013/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663102323
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成果の花が開くとき
一年の約三分の一が凍った空気に包まれる北の地にも,五月には花の季節がやってきます。冬の間,色味の薄れた景色を見慣れた目には,新緑と花の輝きがしみるほど美しく,それだけで一つの生命として生きていることを素直に喜べる心持ちです。その花たちが美しく咲くには,それ以外の期間が大切なのだとか。私たちがその年に出逢う花々たちは,目立たない時期に淡々とすべきことをしながら時間を過ごしてきた植物たちの成果と言ってもいいのでしょう。
実習の終盤は,学生たちの学修の成果が花開く時期*1。それぞれの努力が大きなものであるほど,開花の準備をしっかりしてきたとも言えるのですが,それが報われ花開くかどうかは誰にもわかりません。実習の終わりが近くなるにつれ,眼に見える成果をほしがる気持ちが適切な思考や行動のノイズになることもあり,心が揺れる学生もいるものです。現場に慣れ,いわゆる“手のかからない状態”の学生たちでも,実際には心の揺れの支え手を必要としていることが間々あるのです。支え手は現場の看護師のことも多いのですが,状況によって教員のこともあります。臨機応変に現場の状況に沿いながら必要な役割をとり,学生の状態に合わせてフォロー体制を調整することが大切でしょう。学生にとっては,責任をもって一貫した対応のできる相談相手に支えられ,受け持ちの期間でできる限りのことをしてその役割をきっちりと終える体験が将来につながる何よりの財産になります。今回は,精神看護学実習で困難な対象者と対峙した二人の学生をとりあげ,実習終盤のエピソードをご紹介しましょう。
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