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保健師の基礎教育を大学院教育へ移行した経緯
2009(平成21)年の保健師助産師看護師法(以下,保助看法)の改定によって,保健師の専門性の強化を目指し,保健師教育の就業年限が6か月以上から1年以上に変更された。この改定により,4年間の統合カリキュラム(看護師国家試験受験資格と保健師国家試験受験資格を大学の卒業要件の1つとしてきた)をすべての大学に適用することが廃止された。その結果,保健師教育は学士課程での必修または選択制,専攻科,あるいは大学院修士課程となり,大学では複数の教育課程から選択できるようになるなど多様化している。
本学は,よりよい看護を国民に提供していくためには,多くの課題を含んだ大学教育の統合カリキュラムを見直すことが最善の策であると考え,学士課程での保健師教育を廃止し,大学院修士課程の教育として実施することにした。社会環境の変化に伴い,乳幼児から高齢者までの健康の保持・増進のための保健師の役割が強く期待されているにもかかわらず,学士課程の教育では期待に応えられる保健師教育が実施できていない現状があるからである。保健師が,少子高齢社会において生活者への健康づくりの担い手として活躍するためには,「地域社会の健康づくりの組織者」としての専門性とリーダーシップをとれる能力を身につけなければならない。また,保健師教育を修了した学生のうち保健師として就職できるのは極めて少人数であり,多くの卒業生が保健師免許を生かせてない。人材育成には社会資源の投資が伴うため,需給バランスを考慮したものにしなくてはならない。保健師としての専門性が希薄化された統合カリキュラムではなく,大学院修士課程で専門性の高い系統的な教育を通して,医療保健をとりまく環境変化に対応できる質の高い保健師を社会に輩出することが大学の役割であろう。
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