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はじめに
多くの関係者には周知のことであるが,有識者検討チームによる看護師国家試験における用語の見直し案が検討され,2010年8月に厚生労働省から公表された(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000000mswm.html)。
この数年間,筆者は,看護師国家試験を出題内容や形式・テスト理論などの観点からではなく,日本語教育における言語的な側面,特に語彙という観点から調査を行ってきた。日本語教育とは,日本語を母語としない人々に日本語の何をどのように教えるかという言語教育の一分野である。
昨年8月に公開された上記見直し案を,日本語教育の観点から見ると,必ずしもEPA経由の外国人候補者にとって有利になるものだとは限らないと思われた。見直し案を大別すると,「候補者にとってプラスの効果があると考えられるもの」「候補者にとって効果があると言い難い場合があり,慎重に対応すべきもの」「候補者によってはマイナスとなる可能性があるもの」の3つに整理できるであろうと思われる。
また,見直し案の概要は以下の通りである。(1)難解な用語を平易な用語に置き換える,(2)難解な漢字にふり仮名をふる,(3)主語・述語・目的語を明示する,(4)疾病名への英語の併記(人名を含む),(5)国際的に認定されている略語等の英語の併記。
今回は,見直し案の功罪の議論を行い,それに沿って第100回看護師国家試験が外国人看護師候補者にとってどのようなものであったか。また,今後の改善の可能性について述べる。報告には各項目の具体的な対応策が項目ごとにいくつか載せられている。その対応案に沿って議論を進めていく。なおこの議論は,看護師国家試験の語彙の諸相を調査してきた筆者の個人的な見解である。
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