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●【主な論文】「加速看護プログラムにおける学生の経験」から
学士入学に関する質的研究の記事を紹介します。アメリカでは,看護に対する社会的ニーズの高まりに応じ,看護学以外の学部を卒業した学生に対する,特別な看護教育課程を始める試みがなされています。そのなかでも,修士課程に直接入学して看護師養成のための課程と修士課程の両方を一度に学ぶコース(加速看護学修士入学課程)が,全米で現在65大学にあるのだそうです。この記事では,このコースで学ぶ学生たちへのインタビュー結果をもとに,この課程への教育的示唆が記されています。アメリカの加速看護学修士入学課程の学生は,実際にどのような体験をしているのでしょうか?
学生たちの体験には,主要な5つの特徴があると述べられています。第一に,他学部卒の学生たちは,臨床実習で,知らない世界に来たように感じることが指摘されています。共通の言語や習慣に慣れていないため,まるで異国に来た旅行者や移民のように自らを感じるのです。第二に,看護の仕事の身体的過酷さを実感することが上げられています。12時間以上の立ったままの実習や,睡眠リズムを調整しなくてはならないことなど,過去に経験したことがない厳しい現実に学生は直面します。第三に,与えられる課題の学習ペースの速さに,学生たちは追い込まれます。ある学生は,一般の看護学修士課程は“じっくりオーブン焼き”で,自分たちの加速看護学修士課程を“電子レンジ版”と表現しています。第四に,臨床の場の緊迫性を,看護学部卒生よりも敏感に感じていることを指摘しています。他学部卒生たちは,患者のプライマリケアを開始するやいなや,すぐに患者の生命が死と直結している緊急性を実感するようです。そして最後に,第五の特徴として学生たちの学習意欲の高さを述べています。多くの学生たちは,念入りに準備してから実習に臨むのだそうです。学習意欲も高く,過去の学業での成功体験や豊富な人生経験があるからこそ,職業意識や責任感も強く,確実な予測の上に行動すべきと考えるのでしょう。しかし現実には,患者個々によってニーズが異なり,臨機応変に対応することが求められ,看護学が不確かな学問領域であることに学生たちは戸惑いを覚えているとしています。
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