特集 中小病院や施設に実習を求めて
高齢者ケア施設だからこそ学べる看護の本質
牛田 貴子
1
1信州大学医学部保健学科
pp.184-188
発行日 2011年3月25日
Published Date 2011/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101698
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私は現在,大学で老年看護学,家族看護学の教育・研究にあたっている。とはいえ,看護基礎教育の変遷に沿うように,いわゆる進学課程,レギュラー課程,短期大学,大学で,さまざまな看護学領域の教育に携わってきた。この教育経験のなかで,受け持ち対象者への看護展開を行う2週間以上の臨地実習先として,重症心身障害児施設,肢体不自由児施設,介護老人保健施設等の新規開拓,準備・調整を行ってきた。いずれも初めて看護系教育機関の臨地実習を受け入れる施設であったため,看護部門責任者との連絡・調整だけでなく,現場に入り込み,スタッフ(他職種も含む)とともに時間をかけて準備に取り組んだ1)。
地の利のない現任校に着任後は,施設内勉強会を始め,研究会や研修会,研究協力等のさまざまな機会を通して培ったネットワークに支えられて,介護老人保健施設やデイサービスセンター等での臨地実習を企画し,3年かけて軌道に乗せた。一昨年からは,「24時間生活する高齢者とその健康と生活を支える看護の実際を知る」を目的に,介護老人保健施設での当直夜勤実習や遅出実習なども展開している。当直や遅出の実習を始めたきっかけは,ある看護師長からの提案だった。「介護学生は夜勤実習を体験して,高齢者理解がぐっと深まり成長する。夜間の生活支援から学ぶことはとても多いのに,どうして看護学生は実習しないのか。学習の機会をつくってはどうだろう」というものだった。実習受け入れをお願いしている他の介護老人保健施設にも,当直や遅出の臨地実習をもちかけると,渋るどころか重要性を理解して前向きに検討いただいた。施設側スタッフの理解と信頼関係により可能となった実習展開である。
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