書評
そのまま使える病院英語表現5000
武田 裕子
1
1東大医学教育国際協力研究センター
pp.1484
発行日 2007年8月10日
Published Date 2007/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102909
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私の臨床留学は,セサミ・ストリートから始まった.留学直前のTOEFLでは約600点を取り,大学院では英語の論文の読み書きもしていたが,ホームステイ先の子ども番組で,「さぁ,口を開けてアーと言ってください」という人形に,初めて口腔を診察する際にどう言ったらよいのか教わった.それほど当時は,診療に直結した英語を学ぶ機会は乏しかった.研修医として採用される前,エクスターンとして指導医について回っている間に私のメモ帳は,診療の際にどんな言葉をかけるか耳で覚えたフレーズでいっぱいになっていった.
本書『そのまま使える病院英語表現5000』には,当時私が書きとめたような臨床現場で実際に使われる英語表現が詰まっていて,その詳細さに驚いた.ポケットに入る大きさながら,診察室に入る患者さんを迎える言葉に始まり,診察の際にかける言葉や指示,処方する薬の用法,次回の診察予約まで,とにかく臨床のあらゆる場面が想定されて至れり尽くせりの文例が盛り込まれている.「たいへんでしたね」「何かあったら言ってくださいね.そばにいますから」といった,患者さんを慰め,励ますための表現や緊急時の確認事項など,通常の英語のテキストには書かれていないけれど,臨床的には不可欠な表現が満載されている.呼吸器内科専門医として,患者さんに寄り添う医療を提供している著者のお一人である森島祐子先生のきめ細かな日常診療が表されているように感じた.
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