書評
―≪JJNスペシャル≫No.87『「治る力」を引き出す 実践! 臨床栄養』―看護の基本そのものである「臨床栄養」の具体的な方法解説書
富田 真佐子
1
1四国大学看護学部看護学科
pp.738
発行日 2010年8月25日
Published Date 2010/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101546
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「栄養」というと,管理栄養士の仕事では?と言われることがあります。私は,栄養は看護の基本そのものであると考えています。ナイチンゲールは,「看護とは患者の生命力の消耗を最小限にするように整えること」であると唱えています。すべての人には自然治癒力があって,治ろうとする力を持っています。それに働きかけるのが看護です。栄養状態を整えることは,患者の生命力を引き出すことに繋がります。その意味で,この本のタイトルでもある「“治る力”を引き出す」というのは看護の本質に他なりません。
臨床現場では今,栄養管理が浸透しつつあります。栄養管理をチームで行うNST(栄養サポートチーム)の必要性が認知され,診療報酬改定により平成18年度には栄養管理実施加算,今年度は栄養サポートチーム加算が新設されました。栄養管理は医療現場において注目をあびているものの一つと言えるでしょう。現在の看護基礎教育では,「代謝・栄養学」についてわずか2~4単位しか割り当てられておらず,看護にとって重要な科目だと認識されているとは言えません。また新卒看護師の看護基本技術に関する実態調査でも疾患別の食事指導や栄養状態のアセスメントといった栄養に関わる項目は一人で実施できる割合が低い結果であり,学習の効果が表れているとは言えません。著者らが述べているように看護師は,栄養管理をベットサイドで行う最終的な実行者です。看護基礎教育や卒後教育においてもっと力を入れていくべき分野であると考えます。
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