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学ぶことをも阻んできた欠格条項
「目が見えない者,耳が聞こえない者には免許を与えない。精神病者には免許を与えないことがある」。かつてこのような法律の欠格条項*1が,疑う余地のないことと考えられていた。特に医療分野に多くみられた。1998年に薬剤師国家試験に合格して,聴力ゆえに免許交付申請を却下され,発言を続けた人がいたことが,問題を社会に知らせ関心を広げ,法律見直しの契機となった。続いて耳が聞こえない臨床医が発言を始め,法案を審議する国会でも参考人に立ったことは,100年以上も硬直していた法律を変えるうえで説得力をもった。欠格条項の撤廃をめざして,障害当事者や関係者が街頭署名を展開し,議会や職能団体でも議論され,問答無用の門前払いは問題との世論も大きくなった。私は1999年に,「もうやめよう!あれもダメ,これもダメ」と,障害を理由とする欠格条項の撤廃をよびかけて会*2を発足し,障害別や障害の有無を超えて取り組んできた。
欠格条項をなくすことには,ただ法律条文を削除すればよいということでなく,障害のある人が希望をもち,学校や職場で合理的配慮*3を得て力を発揮できるようにするにはどうするか,という課題が,常に伴っている。たとえば,目が見えない人が何かを目指して学び,資格免許などをもち就業し働き続けるには,障害それ自体を理由に学校や受験や資格免許の交付の門を閉ざさないことが前提になる。そして,目で見る・活字を読む以外の方法,たとえば,専門書の出版社からのテキストデータ提供,それを音声や点字に変換する技術や機器を快適に使える環境,必要なときに朗読などでサポートする人が必要だ。個々人の異なるニーズを具体的にどう満たしていくか合理的配慮の提供が求められる。そして実際に,医療現場で新たに働くようになった人々がいる。
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