連載 教育の地平線・18
―「1冊の本を通して,人間がもつ温かみを伝えたい。読者に届くまでさまざまなかたちで仕掛けてゆきます」―“自由が丘のほがらかな出版社”を育てるチームリーダー 三島邦弘さん
本誌編集室
pp.531-535
発行日 2010年7月25日
Published Date 2010/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101492
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出版を“チーム”でやる楽しさを伝えたい
──築50年に及ぶ木造一軒家が社屋で,スタッフ皆でちゃぶ台を囲み畳の上で会議(笑)という破格の出版社ミシマ社さんですが,まずその主催される教育イベント「寺子屋ミシマ社」についてお伺いしたいです。
三島 畳はやはりいいもんです(笑)。きっかけは,去年,一箱古本市(不忍ブックストリートで開催される東京都文京区・台東区の地域行事。http://sbs.yanesen.org/)に誘われて,谷中で「出張ミシマ社」と銘打ってイベントを主催したんです。その場所もちょうど同じような古民家で,この会社の雰囲気と似ているなと思いました。で,折角なので店頭販売だけじゃなくてワークショップをやりたいと。そのときに思いついた企画が「寺子屋ミシマ社」(以下,「寺子屋」)です。参加者に1日,ミシマ社の仕事をそのまま体感してもらおうと。うちは社内で「編集」「営業」「仕掛け屋」の3チームを作っています。本を「作って」「売って」「伝える」という1冊の本が読者の手に届くところまでの過程を,ワークショップの3,4時間ででも味わってもらえれば,出版のもつ楽しさを肌で感じてもらえるかなと思いまして。参加資格は自由で,学生も既に出版界で働いている社会人も来られます。別に参加者が出版の仕事に従事されなくても「こんなふうにして本は作られているんだな」ということをわずかな部分だけでも共有できればと。それに何かと「閉じた」イメージの強い出版界ですが,いやいや,全然オープンで,丸裸じゃないですか,という姿を少しでもお見せしたいです。結果,出版や本ということが本来もっている面白さを広げられたら最高です。
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