視座
学術出版社とインパクトファクターという信仰
堀内 圭輔
1
Keisuke HORIUCHI
1
1防衛医科大学校整形外科学講座
pp.1263
発行日 2024年11月25日
Published Date 2024/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408203136
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先生方が英論文を投稿されている学術出版がどのような業界か,ご存じでしょうか.学術出版業界は,全世界で売り上げが3兆円を超えようという巨大産業です.これは音楽業界と映画業界の間くらいに位置します.そして,その市場の50%以上は,大手5社に独占されています.これらの出版社は,研究論文を研究者から無料で入手し,査読はボランティアで賄い,アクセプトにした場合は,高額の掲載費(article processing charge,APCと呼ばれます)を,投稿した研究者に請求します.通常の新聞社・雑誌社であれば,記事の準備に多額の人件費を要しますが,学術出版社は,その大部分を研究者が無償で肩代わりしています.
学術「出版社」といっても,昨今は紙媒体ではないことが多いので,印刷代や郵送費などの実費も不要です.さらに,円換算で安くとも10数万円,場合によっては100万円を超えるAPCを請求し,40%という信じ難い収益率を出しています(通常の新聞社は10〜15%程度とのことです).GoogleやMicrosoftの比ではありません.出版社側は経営を維持するうえで必要だと,高額なAPCの正当性を主張していますが,その主張を額面通り受け入れることはできません.詰まるところ,学術出版社は非営利団体ではなく,利潤を追求している企業だからです.
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