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はじめに
看護教育における新カリキュラムの実施に伴い,2009(平成21)年4月13日に看護師国家試験出題基準が改定された1)。今般の改正では薬剤の用法や薬効の理解の内容が追加され,「疾病の成り立ちと回復の促進」で薬物療法を他の治療法から独立したものとなった。本稿は,薬剤のうち,使用頻度が高い消毒薬を中心とした看護学生の意識調査から看護教育における「消毒」の扱いへの1つの提言となる資料を提供するものである。
消毒薬は医療機関ではもちろん,一般家庭においても不可欠な薬品である。近年,加湿器の蒸留水タンクを換える際,消毒薬(エタノール)のポリタンクを滅菌精製水の入ったポリタンクと間違えた事例2)や消毒薬(ヒビテン・グルコネート)をヘパリンと間違えて静注してしまった事例3)など看護師が消毒薬に係わった医療事故が報告されている。これらの事例は,消毒薬が医療機関内のどこにでも存在し比較的安易に使用されている薬品であるが故に,医療職種の誰でもが遭遇する可能性を持っているといえる。
200床以上病院勤務の看護職員を対象とした「2004年新卒看護職員の早期離職等実態調査」によると,もっと受けたかった教育・研修等の設問の10項目のうち「薬に関する知識教育」が741名中65.3%(看護系大学64.1%,3年課程短期大学70.2%,3年課程専門学校68.6%)で最も多く,「次いで配属先に専門的に必要とされる技術等」57.1%と報告されている4)。
看護師養成のための看護教育における消毒・消毒薬の扱いは,通常,薬理作用や希釈方法などの薬品としての取扱上の基礎的知識は主に専門基礎科目の「薬理学」や「微生物学」で扱い,滅菌と消毒の方法や無菌操作など消毒の手法などについての基本技術は主に「基礎看護学」や「感染予防看護学」などの講義や臨地実習の場で扱っている。消毒については実践で必要な内容として複数の科目でふれており,卒業時には適用すべき消毒薬や消毒処置を含めて消毒の意義を全般的に学んでいる。しかし,消毒薬の管理が不十分なために死亡事故まで引き起こした事例は,消毒薬が必ずしも薬物治療の主流薬の取り扱いのようには受け入れられていない警鐘とも考えられる。医療事故事例の紹介が学習意欲を引き起こすという報告はある5─7)が,消毒について医療事故を教材とした場合の教育効果の報告は見当たらない。
本研究の目的は,看護学生の卒業前の段階で消毒・消毒薬に対する意識を把握することである。看護学生が卒業時に消毒薬に対しての意識(知識や認識)をもっているかを把握することは,大学あるいは専門学校課程での教育効果の検証となるとともに,卒後の臨床現場での看護職新人教育に際して安全かつ適切な医薬品管理をめざすために重要な視点である。
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