連載 教育の地平線・1【新連載】
―「医療とアートが結びついて,空間の質とアメニティを高めることを願っています」―医療施設の空間をデザインするヒーリング・アート・プロジェクト 山野雅之さん
本誌編集室
pp.93-97
発行日 2009年2月25日
Published Date 2009/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101121
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生活に入り込んだ「デザイン」を病院にも
──女子美術大学(以下,女子美)は1992年から医療・福祉施設でのヒーリング・アート・プロジェクトに取り組まれていますが,これはどういうきっかけで始められたのですか。
山野 きっかけは父の入院です。
私が女子美でデザインを教え始めた1986年は,街中のデザインが変わり始めた時期で,私もデザイナーとして,デパートのディスプレイ空間で思いきったことがやれるようになり,デザインが生活のなかに浸透してきているなと感じていたところでした。ところが,がんで入院した父の病院は,無機的で白く冷たかったんですね。白は清潔なイメージがありますが,病院の人は治療や検査などに専念するところとしか見ていないし,患者や家族はそういうところだから仕方がないとあきらめている感じでした。アメニティなどという言葉はまだ現れていませんでした。結局父はそのまま亡くなったのですが,病院が患者や家族にとって,治療のつらさだけじゃなくて何もない冷たい空間で最期を迎えるつらさ,を感じさせるところだと感じてしまったのです。それで私は,病院にはもっともっとアートやデザインが必要だと思うようになりました。
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