看護教育研究
日本へのフィリピン人看護師派遣の現実的な可能性―マニラにおける看護大学のヒヤリングから
前野 有佳里
1
,
馬場 香織
2
,
川口 貞親
3
,
平野(小原) 裕子
1
1九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野
2熊本大学医学部保健学科
3産業医科大学産業保健学部
pp.834-840
発行日 2008年9月25日
Published Date 2008/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663101020
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はじめに
2006年9月9日,日本とフィリピンは,経済連携協定(EPA)を締結し,2007年度より2年間,フィリピンから看護師志望者400人,介護福祉士志望者600人の合計1000人を上限として受け入れることを決めた。この外国人看護師の受け入れは,わが国にとって初めての経験であるため,ひとつの社会問題として議論されている。
日本看護協会はフィリピン人看護師の受け入れの条件として,(1)日本人と同じ看護師国家試験を受験し,看護師免許を取得すること,(2)安全に看護ケアが提供できるだけの水準の日本語能力を有すること,(3)日本人の看護師と同等の条件で雇用されること,(4)看護師免許の相互認証はしないこと,を強く主張している1)。世論においては,フィリピン人看護師や介護士の受け入れは,言葉の問題をはじめ生活習慣の違いなどからケアの質を不安視する意見があり,また病院の中にはフィリピン人看護師を手軽な労働力として期待する向きもあるといわれている2, 3)。
フィリピン人看護師の日本への受け入れに関する研究はまだ緒に就いたばかりで,看護労働力の国際移動の観点から論じられているものがほとんどである4─8)。現時点で,フィリピンにおける看護教育の現状から,フィリピン人看護師受け入れの可能性に言及した調査研究は見当たらない。
そこで本研究では,現地フィリピンの2か所の看護大学において,看護教育の現状を調査した。さらに看護教員へフィリピン人看護師の日本進出の可能性について,ならびに現役看護学生へ自身の日本で働く意欲について,それぞれヒヤリングを行ったので報告する。
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