看護教育研究
統合失調症患者を受け持った学生への指導過程の分析―学生の看護を見つめるための指導者の視点
小笠原 広実
1
,
川村 道子
1
,
毛利 千祥
1
,
盛田 香織
2
,
赤星 誠
1
1宮崎県立看護大学
2宮崎県立看護大学大学院
pp.434-441
発行日 2008年5月25日
Published Date 2008/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100922
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はじめに
精神看護実習は,心の病をもつ人々との関わりを通して学生が他者との認識のふれあいを体験し看護の学びを深める機会である。本学では,ナイチンゲール看護論を土台とした教育を行っており1),全領域の実習を通して,対象に三重の関心2)を注ぐ力を修得できるよう学びを積み重ねている。
そのなかで精神看護実習では,重点的な目標を「精神の健康に障害のある人の内的世界を追体験しつつ,その人の健康回復の援助に必要な看護実践能力を修得する」とし,日々の関わりをプロセスレコードに起こし,学生とともにふり返りながら進めている。心の病をもつ患者への看護では,相手の言動を手がかりに,どういう思いで生活しているのかを感じ取る能力が特に必要であるが,初学者にとって奇異な言動をする患者の立場に立つことは難しい。しかし,学内講義で学んだ内容を想起し,患者の全体像を描いていくうちに,教員の少しの援助で学生は患者の立場に立ち,患者の思いを感じ取ることが可能になる。その結果,初めは理解できない言動にとまどっていた学生が,相手の思いを相手の立場で感じ取りながら,その思いに添って関わりを深めることができるようになっていく。そして患者のよい変化を,臨床の看護者たちとともに喜び合えたとき,臨床実習はさらに楽しいものになっていく。
そこで私たちは,学生がより学びを深めるために有用な知見を得たいと考え,実習指導過程をふり返る取り組みを重ねている3)。今回は,そのなかの一例から,学生の看護を発展させるために指導者に必要な視点を取り出したので報告する。
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