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看護教育における人体解剖実習
はじめに
近年の医療の高度化や疾病構造の複雑化は,看護職者に対して,これまで以上に高度な専門的知識や技術を要求するようになった。また,安全な医療の保障をめざすチーム医療においては,エビデンスにもとづいた安全なケアを実施するというだけに留まらず,それを他の専門職に正確に説明できる能力も必要である。このような看護をとりまく社会や他の医療専門職からの期待に応じるためには,安全なケア技術を確実に身につけることが必要である。人体の構造と機能に関する知識は,このための最も基本となる学習内容である。そのため,看護教育においては,学生が人体構造をより効果的に学ぶための学習方法についてのさまざまな検討がなされている1, 2)。
医学教育においては,すでに人体構造を理解するための学習方法として,人体解剖が行われてきた。近年,この人体解剖実習をコメディカル教育にも取り入れる試みが,医学部保健学科を中心に行われており,その是非について議論されている3, 4)。日本解剖学会では,1992年からコメディカル教育委員会が設置され,コメディカルに対する人体解剖実習を含めた教育について検討がなされてきた5)。同委員会では,コメディカルの卒前,卒後教育への人体解剖実習の必要性を認めながらも,実施方法や指導スタッフの不足など,人体解剖実習が効果的にその実を挙げるには,まだ多くの課題があることも指摘している6)。看護教育においては,実施している教育機関が稀少である7)ことからも,看護学の理解の基盤となる知識を得るための実習内容や方法,さらには,人体解剖実習の必要性についても,他のコメディカルの教育以上に課題があることは否めない。
本稿では,これらをふまえた上で,神戸大学医学部保健学科看護学専攻(以下,本学)において実施されている人体解剖実習の経緯と実習の実際を紹介する。本稿が,今後の看護教育における解剖学教育のあり方を検討していく上での一資料となることを期待したい。
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