連載 人が生きる現場・8
日々を支え,人生を看る―在宅緩和ケア支援センター“虹”
服部 洋一
1
1静岡県立静岡がんセンター研究所
pp.941-943
発行日 2007年11月25日
Published Date 2007/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100799
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◆普通のお風呂に入る喜び
9月,仙台。夏の名残を木立の深い緑と百日紅の花にとどめながら,風は確かな秋の訪れを告げている。「草むしり,14人がかりだったのに,ひと月でもうこんなに伸びて」
と,ボランティアの日野さん。4年前,“虹”がNPOとして立ち上がる以前から,中山康子さんをずっと応援してきた。
正午を回り,錦糸卵がたっぷりとのったちらし寿司に,つみれ汁と白玉のデザートがテーブルに並ぶ頃,入浴介助を終えた中山さんがリビングに現われた。腕まくりに短パン姿,顔や手足は桃色に上気している。改装したとはいえ,“虹”の風呂は一般家庭のものに近い。入浴介助は力仕事だ。
「でも,病院でずっと機械浴だった方は,喜ぶんですよ。『普通のお風呂にまた入れた』って」
中山さんがテレビを消して,軽めのジャズを小さくかける。利用者とスタッフが同じテーブルを囲む。「つみれの秋刀魚,一匹90円よ」「旬のものが一番だね」……
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