焦点
新しいウイルス感染症―新型インフルエンザ流行にそなえて
岡田 晴恵
1
1国立感染症研究所ウイルス第3部3室
pp.496-502
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100302
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
現在,鳥の間で流行しているH5N1型鳥インフルエンザウイルスは,高病原性,つまり強毒型のウイルスである。鶏に感染すれば1,2日でほぼ100%の鶏を殺してしまう,強い病原性を持っている。そもそも自然界では,弱毒の病原性の低いウイルスしか存在していなかった。病原体ウイルスであっても,宿主(ヒトや動物)と共存することこそが,ウイルス自身の子孫繁栄のためにも必要なことであって,100%宿主を殺すような強い病原性は,ウイルス自身にとっても断絶に脅かされることになる。このような理由から,いままで鳥インフルエンザウイルスは,自然界には強毒のウイルスは淘汰されて存在していなかったのである。この強い病原性をもったH5N1型鳥インフルエンザウイルスは,人間の作った鶏の飼育環境に適応して,偶然に生まれてきたウイルスなのである。
現在,H5N1型高病原性鳥インフルエンザウイルスは,広く世界に拡大して,鳥の間で家禽,野鳥,またその他の哺乳類の動物にまで感染している。ヒトでも感染が報告されているのは周知の通りである。さらに,鳥インフルエンザから,新型インフルエンザというヒトの病気の出現が危惧されている。このため,WHO(世界保健機関)や国連を中心として,また国内でも内閣を中心として新型インフルエンザ対策が推進されようとしている。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.