連載 私の一冊・7
少年による過失と償いと再起,そして“成長”の物語
真部 昌子
1
1共立女子短期大学看護学科
pp.732-733
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100122
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『風をつむぐ少年』,ファンタジーを連想させるこのタイトルからは,物語のもつテーマの重さを推し量ることはできない。枚方市立図書館の川上博幸氏はこの本を「16歳の少年による過失と償いと再起の物語である」と紹介しているが,私はそこに“成長”という言葉を加えたい。少年が犯した過失致死という重いテーマを扱った作品であるが,読んだ後のすがすがしさ,充実感は格別で,救われた思いがする。
一人っ子で自己中心的なブレントは転校したばかりの高校生。転校先の同級生との関係もなかなか作れないでいた。ある日,ブレントは友人宅のパーティに招待されるが,そこで同級生たちに馬鹿にされ,喧嘩をしてしまう。さまざまな鬱積や怒りを抱えたまま運転するブレントは,帰宅する道すがら,ふと自殺への願望を抱いてしまう。結果,高速道路の中央分離帯への激突。その事故でブレントは,リーという少女を死なせてしまったのだ。
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