連載講座 公害・6
事前調査
深谷 守平
1
1厚生省環境衛生公害課
pp.28-31
発行日 1966年1月15日
Published Date 1966/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203177
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まえがき
近年,工業の急速な進展と人口の都市集中に伴い公害問題が各所に発生し,環境衛生ならびに公衆衛生の分野における重大な課題の一つとなっている。特に四日市の問題は,大気汚染エピソードとして海外にも知られているところであるが,これを契機として公害に対する国民の意識は急激に盛り上り,沼津・三島における石油コンビナート計画に対する地元住民の反対にみられたごとく極めて強力なものとなり,国および地方自治体における体制の充実と相まって,昨今ようやく本格的に公害防止対策を推進しうることとなった。すなわち,既存の公害の問題に対しては,ばい煙規制法,水質保全法,工場排水法などにより規制を行なうとともに,本年度より発足する公害防止事業団にみられるごとく,さらに積極的に具体的な公害追放の実践に入る一方,新規の地域開発にあたっては公害予防のための事前調査を実施し,これを末然に防止することとした。
この事前調査に関しては,地方自治体はもらろん,最近産業側においてもその必要性を認識する気運をみせており,公害対策上画期的段階に入ったものといえよう。公害対策の原則は予防にあり,この意味において事前調査こそ今後の主題となるもので,厚生省においては,本年度実施する4地区を手はじめに,開発の程度に応じて逐次各地区について行なう計画であり,大いにその成果を期しているところである。
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