特集 児童虐待—保健婦の役割
子どもの虐待のスペクトルとメカニズム
坂井 聖二
1
1坂井医院(小児科)
pp.610-619
発行日 1998年8月10日
Published Date 1998/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902903
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子どもの虐待のスペクトル
子どもの虐待のケースワークに携っているとき,ある児童相談所のケースワーカーの「身体的な暴力を虐待というのはわかるが,ネグレクトを虐待というのには抵抗がある」という発言に出会ったことがある。虐待の中にネグレクトが含まれているのは常識であると思っている人は,このワーカーの言葉は無知のなせる業であると考えるかもしれない。しかし実は,このワーカーの持った疑問は虐待という言葉の意味を巡る重要なポイントを衝いているのである。
われわれは子どもの虐待の定義や捉え方について,もっぱらアメリカにおける活動や実績から学んでいる。今後,この極めて「文化的な」現象である子どもの虐待について,わが国の文化の特異性を考慮に入れた固有の理論を提出することがなければ,単なる「輸入思想」として終わってしまう危険性を常に自覚する必要がある。
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