特集 保健婦こそ施策への参画を—地方財政の中の保健活動の事業化
保健婦の施策への関与状況を調査して
田中 久恵
1
1国立公衆衛生院公衆衛生看護学部
pp.39-46
発行日 1995年1月10日
Published Date 1995/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902744
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はじめに
今や地方の時代といわれ,保健衛生の領域も,地域保健法の制定を契機に,一段と地域の保健ニーズに合わせた施策の展開が求められてきている。公衆衛生活動は,古くはウィンスローの定義を持ち出すまでもなく,近くは1986年のヘルスプロモーションに関するオタワ憲章において,1人ひとりの健康問題を,組織的な活動を通して地域の行政施策に反映して解決していくこと,住民と共に政策的に展開することとされている1)。また,看護の創始者であるナイチンゲールの業績をひもとくと,常に社会的な活動に終始していたことがわかる。公衆衛生の理念の下に地域住民の健康を支援する公衆衛生看護は,歴史的にも現在の時代の趨勢からもますます政策的発想が求められてきている。
しかしながら国および地方自治体は,保健活動の一定水準を維持するため,手順・方針に従って行えるよう法・制度的整備やマンパワー確保をしてきている。その結果として,数多くの事業がおろされてくるにつれ,保健婦は決められた業務を定められた通りに行うだけで精一杯という状況になり,時代や住民要望に業務がマッチしているかどうかを,点検評価しないまま今に至っている。つまり,「行政を手段として使う」ではなく,「行政に使われる」という立場に甘んじているのが実態である。
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