発言席
がん対策と保健婦活動
小川 浩
1
1愛知県がんセンター研究所疫学部
pp.883
発行日 1992年10月10日
Published Date 1992/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902723
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「がんは見つかっても治りにくいし,原因もいくつか疑われているが,はっきりしない。医学だけでは対策は進まないので,社会学,心理学,教育学の助けが必要だ。この難病に一緒になって取り組んでみないか」。大学院で教育心理学を学び終え,その後の進路に思案の折に,運命的な人との出会いから愛知県がんセンター研究所に奉職し,がんの疫学の道に踏み込んではや20年がたった。当初は異次元の世界にとまどうばかりであったが,寛容かつ優秀な先輩同僚に恵まれて,道を外すことなく今日に至った。いくつかの課題の下に研究を行ってきたが,振り返って保健婦活動との接点から思いつくことを少し述べてみたい。
1つは健康教育のあり方についてである。わが国の主要疾患であるがん,心臓病,脳血管疾患などの成人病が,喫煙,過剰飲酒,高塩食品摂取,高脂肪食品摂取,運動不足,肥満など,個人的な生活習慣に起因していることが明らかになりつつある。したがって,成人病対策としては,生活習慣の形成改善に向けた予防教育が課題となる。疾病予防ないし健康増進のための教育活動は保健婦の重要な仕事であるが,現実にはいわゆるハイリスク集団へのアクセスが不十分かつ不適切であるように思われてならない。ハイリスクの人々が,日頃の不摂生がたたって訪れる医療施設こそ,健康教育の実践の場としてふさわしい。
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