連載 感染症 Up to Date・69
生活環境水に潜むレジオネラ属菌感染の危険性
荒井 桂子
1
1横浜市衛生研究所検査研究課
pp.522-526
発行日 2002年6月10日
Published Date 2002/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902635
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レジオネラ属菌とは
レジオネラ属菌が知られるようになったのは最近のことである。1976年,アメリカ・フィラデルフィアのホテルで米国在郷軍人大会が開催され,この時,原因不明の肺炎が発生した。患者は大会参加者やホテルの従業員,近くのブロード街通行人を含む221名にものぼり,死者は34名(死亡率15.4%)に達した。この原因を調査したアメリカCDCは,その年のクリスマス,それまで全く知られていなかった棹状の細菌を剖検肺切片から発見した。これが20世紀に発見された3大病原菌の1つで,在郷軍人会(The Legion)に因み,レジオネラニューモフィラ(Legionella Pneumophila),病気は在郷軍人病(Legionnaires' disease)と呼ばれるようになった。レジオネラは専用の特殊な培地で培養しなければ見つけることができないため,原因菌の発見には6か月も費やしてしまった。現在では研究が進み,レジオネラ属の菌も40種類以上に増えた。以降,レジオネラ属の菌を総称してレジオネラ属菌としている。
レジオネラ属菌は水系,土壌など自然界に広く分布するグラム陰性の桿菌で,他の細菌や原生動物などの微生物と共生している。アメーバなどの体内に餌として取り込まれたレジオネラ属菌は,消化されずに増殖を続け,再び原生動物の体外へ放出される。このように,原生動物の共生下では,レジオネラ属菌が異常に増殖することが知られている。
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