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はじめに
現代の子育てを困難にする要因には,子どもや母親の特性などの個人的な問題だけでなく,現代日本における社会的・文化的状況がより関与している。特に核家族化に伴う家族内のサポート力の低下,母親への育児負担の集中,育児の知識や技術が伝承されない問題,さらに地縁的関係の希薄化や近所付き合いの少なさから生じる閉鎖的な「密室育児」の問題があげられる1)。このような社会的環境の変化に育児をしている母親が適応していくには,母親個人の努力・成長と同時に社会的な子育て支援のシステムが不可欠であると考えられる。
平成9年4月に母子保健法が改正され,各市町村において身近な母子保健サービスを提供し,地域に密着した地域ぐるみでの子育て支援体制の構築を目指すこととなった。
支援対策の1つとして,母親たちの相互扶助を目的としたサポート作りがあげられる。子ども同士の交流,育児に関する学習や情報の交換,行事を共同で実施するなどを目的とし,子育て中の母親たちが子どもを連れて集まる育児サークルが各地に数多く生まれている。これらの育児サークルは自助グループ(セルフ・ヘルプ・グループ)といわれるものである。自助グループとは,「個人の意志によって自発的に結成された小グループであり,共通の問題を抱える人たちが集まり,共感と連帯感を基盤にした相互扶助によって成立するグループ活動を展開している集団」2)と定義されている。自助グループに参加した多くの母親は,自分と同様の体験をしている仲間との関わりに,専門職者から提供される援助とは代え難いものがあることを実感している3)。このようなサポートグループへの関心やニーズはこれからますます高まってくると思われる。
本調査では,参加している母親の視点より,自助グループの存在がどのような効果を与えているのか,その有効性の検討を行うことを目的とする。
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