連載 ドメスティックバイオレンス・1(新連載)
家庭の中の「女性」と「子ども」—2つの虐待問題が“ともに視野に入る”時代を迎えて
波田 あい子
1
1家族機能研究所
pp.345-347
発行日 1999年4月10日
Published Date 1999/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901968
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期待と危惧のあれこれ
児童虐待の特集がはじめて本誌で組まれたのは1993年10月のことでした。それからおよそ5年を経て,今回,被虐待妻(バタード・ウーマンとも言います)をテーマに連載が始まることになりました。家庭の中の「子ども」と「女性」という2つの形の虐待問題が,5年という時間差をもって,地域保健の主役である方たちが読者の雑誌に登場したわけです。私はこの時間差に大層関心を惹かれるとともに,これから始まる,家庭の中の2つの形の虐待問題が地域保健の場において“ともに視野に入る”時代について,期待とともに,なおあれこれの危惧も抱くのです。
期待の1つは,地域に密着した仕事ゆえに1つの家庭で起こっている現実を丸ごと知る立場の専門職の方々の視野に,2つの問題が入ることで起こるさまざまな好影響です。実際,保健婦さんの書かれた子どもの虐待事例を読むと多くの場合,母親—妻の被虐待状況についてもかなり詳しい記載があります。おそらく,具体的な仕事の手順の中では母親への支援も手がけながら虐待児の処遇が進んでいるのだと推察します。両方の問題にいち早く気づいていたとしても,仕事として手がけるには日本の社会資源はあまりにも整っていないので,その困難さは想像に難くありませんが。
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