特集 「成人病」から「生活習慣病」への転換をチャンスに
「生活習慣病」への転換の中で
新井 宏朋
1
1山形大学
pp.706-709
発行日 1998年9月10日
Published Date 1998/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901834
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要約
厚生省は公衆衛生審議会と,その関連部会の提言を受けて,これまで成人病と呼んでいた脳卒中,心臓病,糖尿病,癌などを「生活習慣病」と呼び換えることにした。これらの病気は決して中年期・老年期以後のものではなく,発症の原因が生活習慣のなかにあるからである。そして従来,第2次予防においてきた対策の重点を第1次予防に移してゆくこと,これまで要因別,疾病別に実施てきた対策を疾病横断的に行うことを企図している。
しかし,この厚生省の政策転換を真の意味での公衆衛生のパラダイム転換と辞価するには躊躇する点も多い。墓本的な考え方が医師中心の疾病管理から抜けきれず,「生活習慣」についての発想転換に欠けているからである。今回の提言は,「健康,疾病,障害のすべてを包括した住民主体の生活習慣の創造」という視点でなされるべきもので,「生活習慣に着目した疾病対策」はその部分的な概念にすぎない。WHOは,ヘルスプロモーションの理念として「健康づくり」「地域づくり」への住民参加を重視しているが,今回の提言は,政策づくりへの住民参加には言及していない。先進自治体は住民,専門家と協働して住民主体の生活習慣の創造についての活動モデルを策定し,その政策の形成から実施,評価の全過程を公開して国の政策形成の範とすべきであろう。
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