特集 感染症対策のパラダイムシフト
感染症対策の転換—共存への理念
高橋 央
1
1CDC(米国疾病管理予防センター)
1Centers for Disease Control and Prevention, Epidemiology and Surveillance Division
pp.1082-1088
発行日 1997年12月10日
Published Date 1997/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901693
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感染症対策のパラダイムシフトが今求められている
近年,感染症に関する情報量の増大は世界的に顕著となっている。テレビや新聞といったマスメディアだけでなく,地域の保健公報や回覧版にまで聞き馴れなかった病気のことが書かれている。CDC(米国疾病管理予防センター)のような感染症情報の中枢機関にいても,アウトブレーク(集団発生)の第一報が,誰でもアクセスできるインターネット上の速報からもたらされることさえある。人々の感染症への関心は,当然高まってくるわけである。ただ,感染症に対する一般の人々の関心は科学的なものではなく,むしろ恐ろしさから生じるものであろう。感染経路がはっきりしていない(病原体の疫学が解明されていない)ことや,感染者が最後には死んでしまう(致死性の経過をたどる)ことが,恐怖心をあおる要因かもしれない。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス),MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌),クリプトスポリジウムといった新型の病原体は,日本でも発生が報告されるようになって,日本人はこれらが身近に迫ってきていることを実感した。そして昨年から続いている病原性大腸菌O-157による下痢症の全国的な流行により,いつ自分が感染するかもしれないという恐怖が最高潮に達した感がある。
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