特集 病気とはなにか
随筆
病気と私
細菌と共存
大岡 昇平
pp.26
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661914225
- 有料閲覧
- 文献概要
私は昔から病気というものは,主に細菌の働きから起るものだが,細菌もわれわれと同じく地球上の生物である以上,いいものもいる一方,悪い奴もいるのは仕方がない,なんとかなだめすかして,共存でやって行くより仕方がない一という風に考えて来ました。もっとも近頃はもう年で尿に糖が出はじめたから,そういちがいに片づかなくなって来たが,糖尿病は体質みたいなものだろう,と考える。生まれつき楽天的にできてる人間です。
8年前に胆石ができて胆嚢を取った時も,やはり,石ができるような胆汁を私の肝臓が生産するんだから仕方がない,と考えました。日本の外科手術には,絶対に信頼していますから,手術の恐怖はなかった。針とか指圧とか東洋的な医療法はあまりやりません。種痘を発明し,盲腸を虫歯を抜くみたいに取ってしまう西欧の医術を信用しています。種痘のお世話になってるくせに,科学の悪口をいったりする人間は嫌いです。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.