特集 ケアマネジメント
IV章 保健婦の役割—期待と課題
保健婦本来の活動とケアマネジメント
田中 久恵
1
1杏林大学(保健学部看護学科)
pp.1024-1029
発行日 1997年11月25日
Published Date 1997/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901680
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はじめに
保健婦の置かれている現状は……
高齢者の在宅介護問題を巡って関係者から,『保健・医療・福祉の連携というが,「医療」と「福祉」は何を連携するのかはお互いによくわかる,しかし「保健」とは一体何を連携するのか,何をしてくれるのか,がよくみえない』などといわれる。さらに「保健」の領域を担う保健婦は高齢者の在宅介護問題に何をしてくれるのか,という問いかけがある。病院や訪問看護ステーションからの訪問看護が充実するにつれ,保健婦と看護婦の違いは何かといわれ,同じような内容なら保健婦の行う老人保健法に基づく訪問指導事業はもうよいのではないか,などという声も聞こえている。
しかし,病院や在宅での個別の看護と違って,地域や集団全体がみえる(情報が収集できる)場に配置し,一定の権限や役割を与えるからこそ保健婦なのであって(そのために看護学の基礎の上に社会保障・福祉学,健康教育論,健康管理論,疫学,保健統計学などを付加した教育をしてきた),保健婦の専門性は,今までやってきた(現状),あるいはやれること(現在の能力)で決まるのではなく,国民的レベルで決められたことである。住民が期待する保健婦の役割は,個別の支援において,社会資源をコーディネートすることから,地域の資源を組織化,ネットワーク化すること,個別の健康問題から出発して,地域全体の問題として捉え,人々に示し,有効な政策を専門的な立場から提言,実行していくことである。
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