特集 保健活動のパラダイム・シフト
[学際からのアプローチ]
都市防災学
望月 利男
1
1東京都立大学都市研究所
pp.1027-1032
発行日 1996年11月25日
Published Date 1996/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901472
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はじめに
平成7年1月17日,真冬の長い夜がようやく明けようとするころ,岩盤における断層破壊が明石海峡の地下で始まった。破壊は猛烈な速さで拡大・進行し,南西方向は淡路島,北東は神戸市から芦屋市,西宮市近傍にまで達した。これが兵庫県南部地震であり,地震の揺れはわずか20秒程度にもかかわらず,その最初の5秒から10秒間に実質6000人以上の犠牲者の直接原因となった建物の倒壊,壊れないはずだった高速道路や新幹線などの鉄道軌道の落下をはじめとする電力・水道・ガス・情報ネットワークなどのライフラインの大損傷が生じた。まさに一瞬の地震と第1次被害,そして今も続く震災の序章ともいえる頁が開かれた。
都市型地震災害なる言葉は米国ロサンゼルス近郊を襲った1971年サンフェルナンド地震以降に用いられるようになり,わが国では1978年の宮城県沖地震以後,一般化する。それは狭義ではあるが,「市民生活に不可欠なライフラインに加えられる物理的・人為的損傷」ととらえられる。その理由は,都市システムにあっては一部の損傷が全体に波及し,人命の危機や生活支障,さらにはパニックを引き起こす危険性に直結するからである。
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