連載 保健婦日記・6
ネパール日誌[6]—ネパールに来て思うこと 多様な価値観との出会いの中で
芝山 江美子
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1Nepal Primary Health Care (PHC) Project
pp.836-837
発行日 1994年10月10日
Published Date 1994/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901016
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ネパールで知ったこと
昔読んだインディオの聖地アンデス地方の旅行記と,神々の聖地ヒマラヤの屋根の下の生活は共通するものが多く,とても興味深いです。1993年10月にネパールのジョムソンを訪れた時に,南米のインディオとそっくりの顔つきをした山岳民族の女性が子どもをおぶっていました。彼女の衣服の縞模様が,インディオのものと同じであることにも気づきました。最近,DNA遺伝子の分析からアジア民族が太平洋を横断して南米大陸への民族大移動を行った歴史が推測されていますが,現在のヒマラヤで伝承されている南米と共通の生活文化を目の当たりにして感慨を覚えました。
山荘で食べた山の料理は,インディオのカレーと大差がないし,水浴しない習慣も共通していました。南米における多くのインディオは,スペインに征服,支配された結果,信心深い彼らは来世を信じていまに伝える宗教画を残しています。この宗教画もネパールのタンカ(仏の伝記絵巻)とよく似ています。ネパールの山岳民族も南米のインディオもともに次第に混血が進み,良きにせよ悪しきにせよ,近代文化の恩恵を受けています。顧わくば,今後も彼らがその文化を保持しながら幸せな生活を送ってもらいたいものです。
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