連載 心まどえる老人と支える人々の話—痴呆性老人をめぐる諸問題・1【新連載】
痴呆とはどんな病気であるか
片桐 隆
1
,
堀内 静子
1
1国立療養所小諸療養所
pp.828-833
発行日 1994年10月10日
Published Date 1994/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662901014
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痴呆とはどんな状態か
呆けた老人とか老年痴呆と聞くと,わかり切ったことのように思えて,「ああ,老人になると自然に物忘れがひどくなって,呆けてくるあの状態のことですね」と思い込み,それ以上は考えおよばないのが一般的のように思われる。
実際の痴呆性老人はもっと奥深いというべきか,もっと複雑な状態というべきか,とにかくそう簡単にはいかないように思う。痴呆性老人の介護者からよく訴えられる苦情に「家のおばあちゃんは,嫁の私を泥棒だと言うんです。毎日毎日言われて死にたいほどつらい」とか「毎日毎日家へ帰る家へ帰ると言ってきかないんです,ここが自分の家なのに」ということがある。こんな相談を持ちかけられて,多少の知識のある保健婦でもきっちりした解決策を思いつかないで,なんとなくもごもごとお茶をにごすようなことはないだろうか。これでは保健婦という面子にもかかわるであろう。
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