発言席
症状と回復
斎藤 学
1
1東京都精神医学総合研究所・社会病理研究室
pp.257
発行日 1994年4月10日
Published Date 1994/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900901
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アルコホリックは自分をアルコホリックと認めた時(自分の抱える問題にアル中という症状レッテルを貼った時)から回復(霊的成長)の途につくようになる。現代の市民たちも自らの回復のために,自らに貼るレッテルを用意した方が良いように思われる。とりあえず,共依存というレッテルを薦めたい。
なぜなら,今や社会全体の嗜癖化が進んでいるのであり,私たちはこの大きなシステム(嗜癖システム)の中で否も応もなく,「誰かのために生きる」「社会の要請にそって生きる」といった共依存的関係を他者との間に結んでいるからである。嗜癖システムとは,他者をコントロールし,自己中心の価値観で世を律しようとする嗜癖者特有の態度を前提としたシステムである。
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