連載 母と子のこころの相談室—家族編・2
失われた「子ども」—寄り添う援助の姿勢
田中 千穂子
1
1花クリニック精神神経科
pp.153-156
発行日 1993年2月10日
Published Date 1993/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900650
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はじめに
このシリーズで,私は家族ライフサイクルという視点に立って,家族そのものの成長や変容の過程をたどり,その中で生じてくるさまざまな問題への対応や,援助専門家の姿勢について語りたいと考えています。そして,子どもの問題行動や病気が治って,親子の関係や外界との関係が単に元に戻るということではなく,「前よりも,よりよくなる」ことを目指しています。そこで第1回目には,新しい家族をつくる「結婚」というイニシエーションについてお話ししました。
さて,一般的に2人の男女が結婚すると,そこに彼らの未来を託し,夢と希望をつなぐ存在として「子ども」が生まれます。子どもの登場によって,夫婦は「2」という単位から,子どもを含めた「3」,あるいはより複数の関係性の中に身を置くことになります。多くの場合,子どもとは,すなわち誕生した子どものことを指します。しかし実際には命を授かりながらも,誕生するに至らなかった未生の子どもたちもまた大勢います。そしてこの子どもたちもまた,家族,特にお母さんの心の中に大きな位置を占めることになります。そこで今回は特に,この未生の子どもたちの問題をめぐって,私たち援助専門家ができることについて,考えてみたいと思います。
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