連載 保健所長のひとりごと
忙しさの中で思うこと
荒木 均
1
1茨城県鉾田保健所
pp.1112-1113
発行日 1991年12月10日
Published Date 1991/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900393
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忙しさは人類の敵
公衆衛生学会が近づくと,故藤原喜久夫名誉教授が偲ばれる。先生は2年前,茨城県つくば市で開かれた第48回公衆衛生学会開催中,こともあろうに教鞭を執ってこられた筑波大学付近で交通事故に合い,救急車で大学付属病院に運ばれ,最高水準の医療によって治療を受けたが,意識不明のまま3か月後に他界された。先生は禅の世界にご造詣が深く,「人間は死んだら皆同じになる。氏も名もないのだ」とおっしゃり,先生のお墓には藤原家という活字はなく,梵字で「世界」を表わす言葉が一字刻まれているだけである。先生の死は,「公衆衛生と交通事故は如何」という禅問答のように思えてならない。
何故先生は,三大死因と騒がれている悪性新生物,心疾患,脳血管疾患で亡くならなかったのか。高齢化社会と言われる時代に,平均寿命にすら達せず他界しなければならなかったのか。この問題に答えることは私の生涯の仕事になるであろうが,ここでは「忙しさ」ということに焦点をあてて考えてみる。
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