特集 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)のすべて
各国の老人保健福祉改革からみた日本の高齢者保健福祉推進十か年戦略
前田 信雄
1
1札幌医科大学
pp.933-938
発行日 1991年11月25日
Published Date 1991/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900353
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はじめに
外国での老人保健福祉改革においても,老人へのサービスの効率や効果を大きくするという行政課題はある。しかし,その前になによりもどんな老人の生活も平等に保障しようという人権擁護の原則がある。老人は貧しかろうが家族がいてもいなくても,ケアを受けたい場とそのメニューを基本的には無料で自己選択できるという原則である。そうでないとサービスの受け方が不平等になるからである。家族だけによる在宅ケアは否定された。
この原則の徹底化のためには,行政や制度運営を地方分権化する。税も予算もスタッフも市町村にまかせる。最終的には,必要なサービスを必要な老人にすぐに提供することを,自治体と地域の施設とその地域の専門家と住民とでもって実現する。地域内の民間の病院もホームも行政も企業も住民組織もその一点で合意をして,老人のための質の高いケアとサービスを普及向上させる。サービスの成果については,住民とサービスの受け手が判断をする。その住民の判断を事業予算配分の基準とする。個々のサービスの質の保障と向上とは,地域の自主性にかかっている。国が上から一方的に改革を命令するものではない。これが諸外国における行政の保健福祉改革である。
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