連載 母と子のこころの相談室から—思春期・2
訴えかける力の弱い子どもたち
田中 千穂子
1
1花クリニック精神神経科
pp.898-901
発行日 1991年11月10日
Published Date 1991/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900346
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『生きたデータ』を重ねること
私は心理面接をする時,必ず「もし,自分がこの人(来談者)だったらどうしたか,どう考えたか」ということを面接時の1つの判断材料にしています。つまり,相手が思春期や青年期の人であれば,自分自身の中学生や高校生の頃のことをできるだけ詳しく思い出し,その自分の体験をデータとして使うようにしています。これは第1回目のところで述べたように本や教料書から得られた知識と違い,『生きたデータ』ですので,相手を理解したり,共感するのに役立ちます。
ところが,現代の思春期を生きる子どもたちの問題を考える時,彼らの行動や心理的体験を追体験しきれない部分や,「よくわからない」というもどかしさが自分の中にわきおこることがあります。それは,私自身が思春期を生きた20年以上も前とは,あまりにも社会全体が変わってきたことによるのだろうと思います。
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