特集 保健指導の再検討
保健指導やぶにらみ
田辺 正忠
1
1医療生協わせだ診療所
pp.33-37
発行日 1967年4月10日
Published Date 1967/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203903
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□□批判する医者の立場
「健康は個人,家庭,社会をつくる」という医者と共通の目標をもつ保健婦は,私からすれば大切な同志なのだから,「批判を書け」といわれても,決して文句をつけるわけではない。むしろ豹変する保健行政の側にこそ私の言いたいことは山程ある。なぜなら医者も同じ混乱する医政の下で,低医療費にいじめられながら国民の健康を守るために苦労しているのだ。医療費の自己負担がふえ物価は上り,早期受診が妨げられるという事態が国民をおびやかそうとしているのに,国民は問題の核心について知らされていない。むしろ医者こそが公衆衛生の異端者かのようにいわれるのだ。国民も保健婦も医師も健康については同じ被害者であって,この三者こそが話しあわねばならないと私は素朴に考えたい。次に保健婦と医者とは高所から見れば共通の目標をもつとはいっても,医師会対看護協会というような組織間のことになると論争が絶えないのも事実だ。例えば保助看法がさわがれた昭和39年のこと,看護婦の人手不足が深刻な社会問題となり,厚生省もこれを放任しておくわけにいかなくなった時のことでも解る。
看護婦実動数の激減は当然社会全般での看護婦の経済的,社会的位置づけが,適正を欠いたために起った結果だった。それを厚生省は待遇のことには十分な手を打たないで,しかも新聞の世論も無視できないので,保助看法を変更して,補助者を急造して急場をのりきろうとした。
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